paradox constant webmagazine

5seconds x nf3nf6

PAERADIGM FACTER

2011-02-19

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突然ではありますが、パラドックス定数が劇団になったのは2007年の事で、それ以前は何をしていたのかと言うお話をしたいと思うのです。実はですね(実はって事もないのだが)1998年に旗揚げされ、2006年まで続いたbird's-eye viewという演劇ユニットのほぼ全ての公演に参加させてもらっていたのです。この集団の舞台美術や衣装、照明、音響、チラシ等はとにかく斬新で派手で、演出家も含めてメンバーの平均年齢がほんっと若かったのです。駒場アゴラ劇場での旗揚げ公演の後、三鷹星のホールやシアターサンモール、青山円形劇場といろんな会場にも連れて行ってもらいました。当時使っていたメイク道具一式、ファンデーションやチークブラシなんかもまだ残っていて、そうだ、唇にグロス塗る事もあったなぁ。


コンテンツで一番特徴的だったのは台本が存在しなかった事。5分から10分ずつの短いシーンを積み重ねていって、最終的にある一つのイメージに集結させる。専門的に言うとエチュードによる集団創作と言うらしいのだが、せっかくの機会なので、ちょっと具体的に自分が担当したある一つのシーンがどんなんだったか思い返してみたいと思うのだ。


場所の設定はふつーの飲食店。登場人物は店員1名とお客が1名、そこにカップルが一組現れて計4名。ただ、そのカップルの女の子の様子がちょっと妙なのだ。何か話しかけても自分からは一言も喋らない。店員を呼んで何か注文する段になってももじもじするばかり。ところが、店員が彼女にそっと「ビール3杯」と耳うちすると、元気一杯「ビール3杯!」とオーダーする。彼は混乱する。どういう訳か突如彼女がそういう感じになってしまったのだ。その耳うちは彼にもはっきりと聞き取れるボリュームで行われるようになり、しばしその奇妙なやり取りが繰り返される。遠くから様子を伺っていた客も、なんだかおもしろそうなので参加してみる。彼女はその客の言葉もそのまま口にしてしまうのだった。これがちょっと性格の悪い客で「もう帰りたい」とか言わせてみる。「うるせえなぁ!余計な事言いなさんな!」と外野に向かって怒ってみたりする彼なのだが、「そんな事思ってないよね?」と彼女に対してちょっぴり不安になって尋ねようものなら、すかさず店員が寄って来て「ずっと一緒にいたい」とまた耳うち...
言わされてるのはわかるんだけど、でもな~みたいな。
シュールだなぁ。

...まあ、ばっと見はただの悪ふざけなのだけど、なかなかどうして、これちょっと切ない感じでもあったりするのです。彼は次第に彼女の発言が彼女の意志によるものなのか、まわりの意志なのか、あるいはまわりの意志が彼女の意志なのか、ちょっとよく判らなくなってきてしまう。

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稽古はこれを即興で何度も繰り返します。1回だいたい15分~20分くらいで、当然その都度いろんなネタが出て来る訳だけど、それをビデオで記録したり、演出家が重要なところをメモったりして最終的に5分~10分のシーンにまとめてゆきます。その作業は基本みんなで話し合いながら行われ、即興の稽古中よりもむしろ神経を使ったりして大変だった事をよく覚えています。あの時期に集中的にこういう感じの創作に携われて良かったと思っていて、それは多分、何がおもしろいのかと、どうやったらおもしろくなるのかをとことん考えさせられたからだと思っております。貴重な財産となってあたしの中に蓄積されていることを願いつつ。





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小野ゆたか

俳優 1979年生まれ。千葉県出身。演劇ユニット「bird's-eye view」の旗揚げメンバー。その他出演作に、R.U.Pプロデュース「東京サンダンス」「トンカツロック」、G2プロデュース「おじいちゃんの夏」 など。
2007年、劇団化を受けて劇団員として所属。

パラドックス定数俳優陣の中で最年長。面倒見のよい兄貴肌、たまにツンデレ。
「どよーぶろぐ」なる生活日誌を連載中。別名デッパリーノ・オノ。俳優部代表。左党。

コメント(3)

その貴重な財産でパラドックスは支えられております。5seconds楽しみにしております。

おつかれさま。これからもよろしゅう。・・・なんてな。もうそろそろ、こういう上っ面な遣り取りはやめてみようか。お互い一度、血を見てみようか。どうだい?

今まで、「東京裁判」と「5seconds」を見させてもらいました。
目がはなせなくなり、気がつくと、息をとめて見ていたりして。引き込まれてます。
友人の付き添いでふらりと行った劇に、私がはまってしまいました。
また、行きたいなと思ってます。次回公演も、がんばってください!